ある国のお話4

その国は昔から温暖で、四季折々に若葉が萌え、花が咲き、清流の流れ、燃えるような紅葉と、
自然の美しい国であった。
・・・

それが近年では地球温暖化によって、熱帯地方であるかのように高温多湿な気候となった。
夏にはスコールのような雨が降り、海水の温度が上がって、幾つもの巨大な台風が来襲し、
大きな被害を引き起こすようになってしまった。

台風が来ると川が氾濫したり土砂崩れが発生し、毎回大きな災害となってしまう。
手入れをしていない植林地や、土砂で埋まった沢山の砂防ダムも災害に拍車をかけている。

そこでその国の新しい王様は決心をする。
これまでのように自然の災害を人間がコントロールしようとしても無理である。
むやみに自然と争うのではなく、折り合いを付けて暮らすようにしようと。

川にこれまで以上に大きなダムを造り続けるのではなく、川の上流、中流の氾濫しやすい場所に
人が住むことを禁止して、大きな遊水地なり氾濫原を確保。
その場所の住人には安全な高台などに代替え地を用意して移住してもらうことにした。
もちろん手厚い補償も行った上で。

その結果、川の下流では氾濫が発生しなくなり、災害は少なくなったのであった。
但し、その国はかつてのように四季の美しい国とは言えない。
春と秋は短くなり、一年の半分は蒸し暑い夏という状況は変えられないのである。
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